懐かしい時代劇がBS放送などで再放送されていたりすると、ついつい観てしまうことがあります。今観ても内容の水準が高く、娯楽作品として十分な面白さです。
また、作品の出来とは別に、違った楽しみもあります。 江戸時代が時代設定なのに、撮影や編集の労苦の網目をかいくぐって、意図せず現代が紛れ込んだりします。
例えば、かなりの高齢であろう天下の副将軍様が、家来を数名連れて内密に、全国を行脚し続ける例のシリーズ。
谷間の細道を歩く御一行。その道中、お調子者の子分が、減らず口を叩いて場を盛り上げるも、ご隠居様からたしなめられます。
肩をすぼめシュンとなるうっかり者の彼の背景には、日本の原風景たる美しき山並み、そしてあろうことか山間部の空には、あっ電線が!
そういえば、毎朝早朝に流れている(関東圏だけ?)、誰もが知っているあの将軍の大活躍劇にも。 みなさんご存知の痛快なテーマ音楽が流れる中、左上半身の着物を脱いで肩や腕が露わな姿で、弓をしならせ矢を放つ、若き上様の左上腕部には、幼少時に打ったとおぼしき、予防接種の注射の跡がクッキリ! さすがの吉宗公もBCG接種はしてなかろうと。
もちろん視聴者側も時代劇に、時代考証の厳密性を求めているのではないでしょう。
ちなみに江戸時代には、お歯黒という文化がありました。女性既婚者の多くは黒色の溶液で歯を染色していました。 明治政府により、チョンマゲと同様に禁止令が発令され、それ以後次第に廃れていったそうです。
江戸の風習や風俗を忠実に再現して、お歯黒だらけの時代劇。 それもいかがなもの、ですよね。 毎週心待ちにして観ている、某公共放送で放映されている某大河ドラマを観ていると、 「てぇへんだ!てぇへんだ!登場人物みんな、べらぼうに歯並びきれいで、白いぜ!」 と、ついついツッコんでしまいます。
逆に、俳優さん演じる時代劇の登場人物の奥歯に、しばしばキラリと銀歯らしきものが光ることがあります。 歯医者の端くれとしては、一瞬のその輝きを見逃しはしません。
幕末の尊皇の志士に、銀歯は無かろう。 戦国の世の追手に追われる忍びの者にも、銀歯は無かろう。 ましてや平安時代の市井に生きる民には、もちろん銀歯は・・・。
こうした生身の人間がつくるがゆえに生じてしまう、意図しないリアリティも楽しんでいます。
ちなみに今年の日本アカデミー賞の最優秀作品賞を受賞した「侍タイムスリッパー」は、時代劇愛が溢れる大傑作だと思います。 時代劇好きな方も、そうじゃない方も、まだこの映画を観ていない方は是非とも。おすすめです。★★★★★