口臭の原因の多くは口の中にありますが、中には他の要因によるものもあります。
例えば、腎疾患の患者さんからは、アンモニアが混ざったようなアミン臭が感知できます。
胃がんや胃潰瘍の原因になるピロリ菌の保菌者は、ピロリ菌によって胃の粘膜でアンモニアが産生されますが、口臭に影響を与える程の量ではないようです。
硫黄化合物(CVS)のうち、硫化水素やメチルメルカプタンは腸粘膜において代謝されますが、ジメチルサルファイド((CH3)2S)のみは代謝されず残存します。
そのためジメチルサルファイドは腸から吸収され、血液や肺を介して呼気に含まれることがあります。
お口の中由来の口臭症では、通常硫化水素が発生します。よって、硫化水素が少なく、ジメチルサルファイドが検出されると、血流や肺を介しての内臓由来の口臭の可能性が高まります。
稀な症例ではありますが、トリメチルアミン尿症(Trimethylamineuria:TMAU)という病気があります。
常染色体の劣性遺伝が原因の遺伝疾患であり、一般的に魚臭症と呼ばれます。
この病気は体臭や尿臭のトリメチルアミン臭が特徴で、呼気にも特有の魚臭が強く混ざります。
一般的にトリチルアミンは腸内の細菌が食物中のコリンを代謝して産生されます。
このトリチルアミンは腸から吸収され、肝臓でトリチルアミン酸化酵素により分解されます。
しかし魚臭症の方は先天的にこの酵素が欠如しているため、生体中のトリメチルアミン濃度が上昇します。そのため、独特の口臭、体臭が発生します。
副鼻腔、特に上顎洞(鼻と交通した頬のあたりの骨の空洞)に慢性炎症を生じ、膿汁が溜まると(いわゆる蓄膿症)、鼻からの息だけでなく、喉を通じて口からの呼気に膿の臭いが感じられる事もあります。
後鼻漏といって、鼻腔に生じた鼻汁が喉奥へ垂れ落ちたりし、その鼻汁の原因が細菌からの感染性のものであれば、悪臭として呼気に混ざったりします。
喉の奥に位置する扁桃腺の開口部に蓄積した分泌物が細菌によって腐敗し、
悪臭の素になることもあります。
肝炎や肝機能障害の患者さんは腸管から吸収された硫黄化合物(VSC)を解毒する機能が低下し、肺を介して呼気に排泄されます。同様の作用機序により、アミノ酸の呼気中への排泄が認められます。
糖尿病の方は、インシュリン分泌が低下しているため、体内の各細胞内に栄養素であるブドウ糖を送り込むことができません。
そのため細胞の外では逆にブドウ糖が停滞し、高血糖になってしまいます。
体内の各細胞内ではブドウ糖が不足しているので、脂肪がβ(ベータ)酸化され、エネルギー源となります。
この過程でケトン体が生産され、呼気に混じり特有の口臭が発生する事があります。